報告書・提言・意見

「個人情報保護制度の見直しに関する最終報告」に対する意見

内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室の「「個人情報保護制度の見直しに関する最終報告」に関する意見募集」に対し、JILIS個人情報保護法研究タスクフォースから以下の意見を提出しました。


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2021年1月15日
一般財団法人情報法制研究所 個人情報保護法研究タスクフォース
(板倉陽一郎、江口清貴、加藤尚徳、鈴木正朝、高木浩光、丸橋透)

意見: 本件制度見直し後に策定・公表するとされている「個人情報を利用した研究の適正な実施に関する指針」の策定に際しては、改めて個人情報保護法の法目的を確認した上で、その法目的に沿った原理原則に基づき、そのルールを定めるべきである。

(該当箇所:最終報告1-3学術研究に係る適用除外規定の見直し(精緻化)(3)具体的検討)

理由

「学術研究機関等が学術研究目的で個人情報を取り扱う必要がある場合」について、利用目的による制限や個人データの第三者提供の制限について例外を設けるとされているが、その例外の下で、「学術研究機関等に対して、個人情報を利用した研究の適正な実施のための自主規範を単独で又は共同して策定・公表することを求め」「学術研究機関等による自主規範の策定を支援する観点から、必要に応じ、個人情報保護委員会が、個人情報を利用した研究の適正な実施に関する指針を策定・公表することが適当である」とされている。

こうした指針は、これまでの「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」の例に見られるように、「指針等による規律の平準化という手法には……最も強い規制や最も広い規制に全体を揃えざるを得ず、結果として規律の厳格化を招く……といった内在的な問題や限界」(最終報告7頁)があった。これは、個人情報保護法のルールをそのまま指針に反映させる手法で策定されてきたからであった。今回の制度見直しにより、例外が設けられ、その例外の下で改めてフリーハンドで指針のルールを独自に決めることができることとなるわけであるが、どのような考え方でそのルールを創設することができるのかが、次の課題となると予想される。

学術研究機関等が学術研究目的で個人情報を取り扱う場合について、利用目的による制限や個人データの第三者提供の制限を適用しなくてよいのは、いかなる場合に、なぜ許されるものであるのか、その原理原則を明らかにしなくては、国民の理解を得られるルールとすることはできないであろう。その原理原則は、個人情報保護法の法目的から導かれるものであるはずである。しかしながら、これまでその法目的は「個人の権利利益を保護することを目的」(第1条)とされているのみで、その保護されるべき個人の権利利益がいかなるものであるかは必ずしも明らかにされてこなかった。なぜ生存する個人に関する情報のみを対象としているのか、なぜ統計量への集計を目的とした二次利用が目的外利用として制限されないのか、なぜ仮名加工情報は開示等請求から除外されるのか、それらに共通する理由を明らかにするべきである。

以上